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toricago

『アイデア大全』フェスティバル実施中!

単語登録で「ブラインドタッチ」から「ブラインド変換」の境地へ

 前回の記事では、仕事を速くする一つの方法として、PC単語登録の記事を書いた。読者がすぐ登録できるように、解説付きで約200個の単語を分野別に紹介した。嬉しいことにその記事を読んでくれた読者から、実際に単語登録に挑戦してみたと連絡をくれた人もいた。ということで、今回はそういう人に向けた一歩進んだ工夫を紹介していきたい。
 はてなブックマークからも多くのアクセスがあり、はてブのコメント欄ではGoogle日本語入力で充分じゃないか?」「こんなに多いと覚えられないのではないか?」など、数多くのコメントや疑問点を頂くことができた。そちらの鋭いツッコミに対しても、回答していきたい。前回記事はこちらだ。
toricago.hatenablog.com

目次

単語登録派は「ブラインド変換」の境地を目指している

「ブラインド変換」とは何か?

 はてなブックマークのコメントで最も多かったのは、「Google日本語入力ATOKを使えばいいのでは?」というものだ。Google日本語入力ATOKを入れると、予測変換が大変に充実しているので、単語登録をする必要がないでしょう、という趣旨の質問だ。多くの人が感じていることだと思うが、5年ぐらい前からGoogle/ATOKなどの高機能IMEは非常に使いやすくなっている。流行っているビジネスワードから芸能人のフルネームや流行の曲名まで予測変換に現れるし、自分の過去のタイピング履歴を賢く学んでくれるので、非常に使いやすい。これなら確かにわざわざ単語登録をする必要がない、という結論になりそうだ。
 しかし私は、高機能IMEの予測変換に頼っていると、タイピングスピードはある一定レベルのスピードを超えられないと思っている。なぜなら単語登録派の人は「ブランド変換」の境地にたどり着けるが、予測変換派の人は「目視変換」のスピードを脱することはできないからだ。
 これを理解するために、高機能IMEの予測変換機能を利用している人のタイピングの流れを考えてみよう。まず、一つの単語を途中までタイプし、変換候補をチェックして、一番上の予想が正しければEnterで変換するし、そうでなければ2番目や3番目の候補をDownを押して選択するし、場合によっては、もう少し長く打ってみて正しい変換候補が一番上に来てからEnterを押すかというプロセスを踏むことになる。しかも、このプロセスを1単語ごとに繰り返すのだ。(もちろん、IMEの設定によってプロセスは多少、変わるかもしれないが、大まかな流れは同じだ。)

予測機能に頼るとタイピングが遅くなる

 上記の予測変換の問題点は2つある。1つ目は、予測変換を気にしながらタイプするので、スピードが遅い。予測変換は毎日変わり続ける自分のタイピングパターンや世の中の流行などに影響を受けて、必ずしも自分の意図した単語が1位に現れるとは限らない、というのも問題だ。もちろん利用頻度の高い50個程度の単語はちゃんと一位に現れやすいが、それ以外については予測が変動しやすい。
 一見、予測変換に頼ることで速く文章を打てる気になるが、単語登録派の人と比べると圧倒的に時間がかかってしまうと思う。少なくとも私は単語登録を使いこなした方が遙かに速い。なぜなら、いちいち予測変換候補を確認せず、どんどん文章が進んでいくからだ。
 単語登録では後述のようにローマ字を中心にキーを割り当てるので、他の変換候補と重複することがほとんどない。誤変換の心配はほぼない。そのため、Space(変換する)とほぼ同時にEnter(変換決定)をすることができるのだ。ある意味、単語登録派はディスプレイを見るなと言われても、文章をすらすら打てる。キーボードを見ながらのタイピングとブラインドタッチが大きく異なるように、「目視変換」と「ブラインド変換」もスピードに無視できない差が生じている。

予測機能に頼ると脳のエネルギーが奪われる

 2つ目の問題点は、脳の集中力が、変換候補の選択に奪われてしまうことにある。正しい変換候補が一つ目に来ているのかどうかを常に気にしながら文章を書いていかないといけない。
 比喩で例えれば、英語が不得意な人が、頭の中で言いたいことを日本語で考え、それらを分割し、一つ一つの単語を電子辞書(予測機能)で調べて英単語に直しながら英語をたどたどしく話しているイメージだ。一方で単語登録派の人は、単語カードで死ぬほど英単語を勉強してきたので、言いたいことが瞬時に頭の中で英訳できてしまう。そして、頭のエネルギーを英訳ではなく、伝えたい内容自体に割くことができるのだ。少々大げさかもしれないが、私がここまで好んでたくさん単語を登録しているのには、そういう気持ち良さがあるからだ。

もちろん、予測機能も併用する

 ただし、予測変換機能を使わないというわけではない。大いに助けられている。単語登録は300個程度しか行っていないので、日々のタイピングする単語がすべて網羅できているわけではない。単語登録を優先的に活用し、予測変換機能も少し活用する、というのが実際のところだ。

思考のスピードが追いつかない?

 「そこまでタイピングが速くなっても、思考のスピードが追いつかない」という人もいるかもしれない。私も決して考えるのが速いわけではないが、ソコを意識的に鍛えるようにしている。お勧めはベストセラーの『ゼロ秒思考』(著:赤羽雄二さん)の方法である。もし単語登録を増やしたことでタイピングが思考のスピードを超えてしまった人がいれば、試してみると良い。こちらの記事も是非、参考にしてほしい

PC単語登録をクラウドで同期し、複数PCとスマホで使いこなす

 はてなブックマークのコメントで次に多かったのは「PCが壊れたらお終い」「PCを変えたら生産性下がりそう」などというツッコミだ。私もこれには苦労したので、いくつかノウハウを紹介しておきたい。結論を先に言ってしまうと、ATOKのCloud Sync機能がお勧めだ。

辞書を出力して他PCに移すという原始的方法

 私は、会社ではWindowsのPCを、自宅ではWindowsMacのPCという3台を使わないといけない事情があって、単語登録という意味では面倒な事態に置かれていた。
 最初に挑戦したのはメインPCで作り込んだ単語の辞書を出力し、そのファイルを他PCにインポートするということだ。しかし新たに単語登録をする度にそれを繰り返さないといけないし、別々のPCで別々の単語を新たに登録してしまうなど、差分の管理も手に負えなくなった。

Dropboxに辞書を移し、Symbolic Linkにより複数PCで読み込む

 次に挑戦したのが、辞書のクラウド管理だ。私はGoogle日本語入力を利用してきたのだが、残念ながらGoogle日本語入力クラウド同期機能が数年前に廃止されてしまった。そこで、辞書をDropboxで管理して、複数PCからDropboxに置いている辞書を読みに行かせることを試した。Symbolic link設定など、細かいところで非常に時間がかかった上に、メインPC以外から単語登録をすることは仕組み上できなかった(単語を読み込むことはできたが)。なのでこれもお勧めできない。

ATOK Syncが最もお勧め!

 最後に挑戦したのが、ATOKである。無料のGoogle日本語入力の予測機能があまりに性能が良かったので、有料のATOKにしようなんてことは考えたこともなかった。しかしライフハッカーとして両者を試してみるべきだし、こうやってブログで単語登録を読者にお勧めしているという立場上、試してみるのが筋である。それに、はてなブックマークのコメントを見ていると、ATOKGoogle日本語入力は4対6ぐらいでの割合のようで、意外にATOKが多いことに驚いたという理由もある。
 実際に試してみると、予測変換機能や単語登録周辺の設定などはGoogle日本語入力と比べ、少し機能が充実している。例えば英語のタイピングも予測変換してくれる。しかしここで強調したい最大の利点はクラウド同期機能があるということだ。私はこれで複数PCを無事同期することもできた。ATOKアカウントを通して同期が行われるので、手動で面倒なファイル管理などを自分でする必要はない。
 スマホでもATOKアプリを入れるだけで、PCの単語登録が常にAndroidiPhoneにも同期されるのが素晴らしい。(Mac日本語入力を利用していれば辞書を自動的にiPhoneに同期する機能はあるので、そちらを使うという手もある。)
 有料だが、複数PCを使う人やデータバックアップをしたい人にお勧めだ。私が試したのはATOK Passportと呼ばれるもので、ベーシックで309円/ 月、プレミアムで514円/ 月だ。(単にバックアップしたいだけなら、少々面倒だが、辞書を出力してクラウド保存するだけで解決する。)

PC単語登録をすべて覚える工夫

 はてなブックマークのコメントで3つ目に多かった反応が「覚えきれない」「覚えるコストが高い」「登録しすぎると誤変換を起こす」というものだ。こちらに関してもノウハウを紹介していきたい。

覚えやすいように登録する

 まず、覚えやすい単語登録をする必要がある。私は単語を二つに分割して、冒頭のローマ字をつなげて2ローマ字の単語登録をしている。たとえば「学習」は「gs」、「連携」は「rk」になる。これの利点は打つキー数が少ないことだけでなく、誤変換が起きないことである。「gs」や「rk」という2文字で変換することは登録した単語以外では基本的にあり得ない。
 一方で、ひらがなを使って登録してしまうとすると、誤変換が起きる可能性が発生して、変換候補を意識的に選択しないといけなくなる。例えば「楽天」を「らて」と登録してしまうと、飲み物の「ラテ」と区別しながら変換しないといけなくなり、ブラインド変換できなくなる。

同じ読みに登録しない

 そして同じ読みを割り当てないように気をつけている。例えば「統計」と「知識」も同じローマ字になってしまうが、苦肉の策として、「tk」「ck」と区別している。「学習」と「学生」は両方とも「gs」になり重複してしまうので、その場合は「学生」→「gks」というように、3文字で登録する。しかし若干覚えづらくなるので、「がせ」というように、冒頭のひらがなを利用することもある。(「ガセ」と重複するが私は「ガセ」という単語の利用頻度がゼロに近いのでOKだ。)
 ローマ字を使うのは頻度の高い単語で、ひらがなは頻度の低い方を割り当てる。なぜならローマ字の方が打つキー数が少ないからだ。

徐々に登録していく

 一気に数百個の単語を登録してしまうと、とても覚えきれない。私の失敗談を明かしてしまうと、初期に気合いを入れて、一日に百個以上の単語を登録してしまった。そういうときは「どういう単語を登録すれば良いか?」と想像力を働かせながら登録することになる。しかしそういう時に登録した単語は意外に利用頻度が低いものになりがちだ。
 お勧めは、メールを書いたり、資料を作ったり、ブログを書いているときに、「あ、これを登録しよう!」と思ったものを登録することである。これなら実用的な単語がどんどん登録されていくことになる。
 そのためには単語登録をするためのショートカットキーを覚えておくと良い。環境やIMEによるのでググって欲しいが、例えば私の場合はControl+Shift+Eで、単語登録画面が浮かび上がる。

無理矢理、覚えていく

 最後に、無理矢理覚えるというのも欠かせない。私は会社のランチタイムなどに、辞書をエクセルにエクスポートし、変換後を1列目に表示させ、2列目に変換試験のようなものを月に一度ぐらい行っている。最初は数割ぐらいしか変換できないが、2,3回繰り返すだけで9割程度の正解率に達する。何度やっても覚えられないものは、登録している文字列が良くない可能性があるので、削除することもあるし、修正することもある。登録したときは「これはなかなか良い単語登録だな!」と思っていても、こうやって自分で試験でアウトプットを試みると、本当に引き出しやすい単語登録になっているかが良くわかるのでお勧めだ。
 「おいおい、ここまで単語登録にエネルギー使ってどうする?本末転倒やろ!」というツッコミもあるかもしれないが、ライフハッカーとしてはむしろ当然の戦略だと思う。目先の労力が長期的に多くの時間を節約することになるのは望むところだ。それに、エンジニアやプログラマーは様々なツールで、実にいろんなことを覚えてきたはずだ。VimEmacsに最初に挑戦した頃を思い出せば、わけのわからないコマンドをたくさん頑張って覚えたと思う。それと比べれば単語登録を覚えるなんてチョロいはずだ。

終わりに

 「ブラインド変換」の境地に達するには、数十個の単語登録ではまったく不足していて、数百個を登録して初めて実現可能性が出てくるものである。私も部分的に「ブラインド変換」が達成できているに過ぎず、偉そうに語れる立場にはまったくないので、今後も一日一個ぐらいの緩やかなペースで徐々に登録し、年内に500個を目指していく予定だ。
 IMEについては、自分の状況、環境、目的と合わせて選ぶのが良い。私は今回Google日本語入力からATOKに切り替えて本当に良かった。複数のPCとスマホの自動同期で快適さがさらにアップした。しばらくはATOKで単語登録を極めていきたいと思う。
 最後に、以上の話を一つのマトリックスにまとめてみたので、自分の状況に合わせて参考にしてほしい。

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