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toricago

『アイデア大全』フェスティバル実施中!

『Re:ゼロから始める異世界生活』で鍛えるリゼロ思考

<今回の目次>

はじめに

 仕事術やライフハックを極めていく上で、色々とビジネス書や自己啓発書を読んでいるのだが、その中に漂う仕事や人生に対する価値観にどうも多様性が低いのではないか、というのが気になっていた。「好きなことを仕事にしよう」とか「キャリアではリスクをとって、どんどん失敗しよう」なんていうのを、自分一人の成功例を一般化していたりして、明らかに深く考えずに書いているようなケースも多い。本に出てくるテクニックも似たり寄ったりで、「意思の力は貴重だよ。例えばフェイスブック創業者マーク・ザッカーバーグは毎日同じ服を着ているのは、本質的でないことの意思決定を減らすためだよ〜」というのは何度出くわしたことか。
 周りを見渡すと、多くのビジネスパーソンが同じようなビジネス書、自己啓発本、その他メディア等の情報に接しているような気がするが、コレは流石に、「もっと情報源を多様化していかないといけないのでは?」と思い始めていた。凡人である私が、そういう皆と同じ情報をいくら後追いしてライフハックブログの記事を書き続けても、本当に面白くて役立つブログにはいつまでたってもできないかもしれない、と感じたり。まぁ、単に対ビジネス書でのラーニングカーブが緩やかになってきただけの話かもしれないが、どちらにしても、何かを変えないといけない、と感じ始めた。
 そんな時に、ヲタクアニメは観たことがなかったが、映画『君の名は。』を観て、色々と感じるところがあった。ブログでも記事を5つに渡って書いた。その時ふと思ったのは、もしかしてアニメには自分が今まで接してこなかった価値観や仕事術のヒントが隠れているかもしれない、ということである。*1

 そこで先日、アニメ好きのライフハッカー仲間から、超大ヒット中のアニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』を勧められたので、ココでちょっと冒険してみるか!と思った次第である。そして観てみたら、案の定、ライフハッカーとしては非常に示唆に富む、非常に面白いアニメだったのだ。ということで、ココでは学んだことをいくつかまとめてみたい。
 世界の鼻息の荒い起業家たちが次なるMark Zuckerbergを目指している中で、なぜか日本のビジネスパーソンNatsuki Subaruを目指して独自の進化を遂げていた、なんてことになったらちょっとおもしろいなぁ、と妄想を膨らませながら書いてみた(笑)。

 ※ちなみに、ガンガンにネタバレしていくので未視聴の方は要注意。

ペテルギウスですっっ!

 この物語で私が最も共感してしまったのは、悪役・ペテルギウスである。彼の価値観は「勤勉」。福音書で言われた通りに100年以上も努力を継続する、超ストイックなキャラだ。「魔女の寵愛に応えなければ!!」と常に自分を追い込んでいる。誰がみても勤勉なペテルギウスだが、彼は自分を「怠惰」と評し、さらに「勤勉」の階段を上り詰める。なんて自分に厳しいことだろうか。
 魔女をあまりに信じている状態は、ある意味、自分の心を魔女に預けているようなものである。自分で感じることもできなくなったのだろう。例えば彼の名台詞「脳が震えるぅぅ!」というのを深読みしてみよう。普通は「心が震える」のだが、ペテルギウスは魔女の価値観を押し付けられているので、心が奪われてしまっている。だから脳で感じるしかないのである。切ない。
 さらに切ないことに、彼のそんな信念は幻想だったようだ。魔女を信じて努力をしてきたのに、福音書の通りに行動してきたのに、最後のシーンでは魔女に心臓を掴まれて殺されそうになる。そのあとスバルに殺され、ペテルギウスはこの物語から消え失せる。

私たちはいつペテルギウスになってもおかしくない

 私自身はライフハック術を極めることにそれなりの労力を割いている。新しいライフハックを生み出していくには、一時的に面倒な手順が増えたり、新しいことを覚えないといけないこともある。試してみても時間の無駄になることもある。
 ライフハックを極めるには、ある種の勤勉さがないといけない。「時間を節約することは善」「スピードを上げることは善」という価値観を心から信じていないと、そこまで努力はできない。それに、何かを極めていくには、ある種の気持ち悪さも必要だ。他の人から「なんでそこまでやるの?」と不思議な目で見られることもある。そういうこともあってペテルギウスに自己を投影してしまった。
 これらは一例に過ぎなくて、私たちは日々、色々な価値観・常識に縛られ、それを信じるよう育ってきて、それを勤勉にせっせと実践している。ペテルギウスは滑稽で哀れでバカに見えるかもしれないが、同じことが私達にいつ起きても不思議ではない。
 唯一の武器である「見えざる手」も、スバルの登場で強みを失った。時代や状況が変わっていく中で、私達も強みや優位性を突然失う日が、いつ来てもおかしくない。それに、信じていた価値観を無意味だったと思い知ることも、誰にでも起こりうることだ。その気付きが遅ければ、ペテルギウス式DEAD ENDが待ち受けている。
 知らず知らずのうちに世の中から押し付けられてきた価値観・世界観・生き方を検証したり、見直したりしながら、自分独自の価値観に徐々に調整していかないとなぁ、と改めて思った次第である。

困難な局面で息切れしないために

 ペテルギウスからスバルへと焦点を移してみよう。スバルは、「俺がエミリアを救わないといけない。俺が、俺が、俺がぁぁっっ!」と自意識過剰になるシーンが中盤でたくさん出てくる。一見すると志は高いが、まわりの騎士たちと比べると実力は桁が3つぐらい低いし、エミリアは傷つけるし、単なる「意識高い系(笑)」の状態に陥っている。
 志の赴くままにエミリア救出に向けて意欲的に活動をしていくスバルであるが、様々な困難が待ち受ける。最初はめげずに色々とチャレンジをするスバルだが、次第にイライラが募り、また精神力も消耗していく。自分の剣の術を磨こうとトレーニングをするが、敵を倒せる実力からは程遠いまま。他の王選参加者に協力を求めるが、こっ酷く断られる。レムと二人で村に向かうが、案の定失敗する。チャレンジを続けることは、精神力が求められるのだ。例えば、『未来に先回りする思考法』(著:佐藤航陽さん)から引用してみよう。

 とあるプロジェクトを立ち上げる際にスタッフを募ろうと声をかけてみるとします。あなたはそのプロジェクトの成功に、とても自信を持っている。そして、熱を込めて最初の一人に声をかけたところ、意外にも、冷たく断られてしまいました。おそらくその自信の分だけショックは大きく、やめたくなりもするでしょう。多くの人は、ここであきらめてしまうのです。しかし、100人に声をかけ続ければ、最終的に10人ぐらいは協力してくれるかもしれません。この場合、プロジェクトに協力してくれる確率は10分の1ですから、50人必要な場合は500人に依頼する方法を考えれば良いことになります。確率が見えれば、適切な対処法がわかります。
 物事がうまくいかない場合、パターンを認識するために必要な試行回数が足りていない場合がほとんどです。サンプルが必要だと頭ではわかりながらも、感情的な理由から十分な数が集まる前にあきらめてしまう。目標の達成を阻んでいるのは、実は人間の感情というフィルタだったりします。
 もちろん人間である限り、この感情の揺らぎから逃れることはできません。それでも一回一回の成否に一喜一憂せずに、パターンと確率が認識できるまで「実験」だと割り切って量をこなすことが重要です。

 スバルはかなり試行錯誤を積むことである程度のサンプルを集めていたのだが、あと一歩のところでギブアップしてしまったのである。その証拠に、スバルが奮起する18話以降では上手く回り出す。なので重要なのは、試行錯誤を繰り返すことと同時に、息切れをしないよう、感情を切り離す努力を行うことかもしれない。もしある程度感情を切り離すことができれば、映画『Edge of Tomorrow / All You Need is Kill』の主人公のように、数千回の死に戻りを経験してもめげずに、目標に少しずつ、確実に近づいていくことができる。でも現実にはコレが超絶難しい。
 結果が見えてきたり、希望が見えていれば頑張れる。努力もしやすい。だけど実際には努力しているのに結果が全然出ない期間が長く続くことがある。そこで感情を切り離せないと、「俺はこんなに頑張っているのに…!」とどん底スバルくん状態になってしまい、すべてが空回りしてしまう。他人のアドバイスも「お前に何がわかる…!」と反応してしまう。そこの感情ハックは非常に難しい。頭ではわかっていても心がついてこない。
 こういうときには、ビジネス書の「失敗は何度でもしよう」とか「失敗は成功のもと」とかの話をいくら読んでも効果は薄い。今回アニメを観て、やっぱり物語の力はそこを飛び越えられるなぁ、と感じた。勇気をもらえる。
 なので、チャレンジの結果が出なくて苦しんでいる期間は『Re:ゼロから始める異世界生活』の気に入ったシーンを何度も視聴するのも良いかもしれないし、映画でも小説でも同じようにできるかもしれない。以前下記の記事で解説したが、私は気に入った映画はYoutubeで購入し、いつでもスマホで視聴できるようにしている。感情を切り離す訓練もやっていきたいが、現状はここで紹介できるほどのノウハウはない。将来的にそういう方法も紹介できるよう、頑張っていきたい。

笑って明日の話をする勇気

 スバルは物語の中盤までは非常に苦しい思いをしていて、精神的に限界に達してしまうのだが、第18話の後では、それが一変するのである。
 白鯨との戦いやペテルギウスとのシーンなどを見てみよう。18話までの、例えば王選候補者に協力を断られるなどの困難と比べると、遥かにプレッシャーの大きな出来事が次々と起こるのにもかかわらず、スバルは終始楽しそうなのである。しかも、小さい困難はあるものの、やることやることうまくいくのだ。白鯨との戦いに勝利し、ペテルギウスも倒したし、村の人も助けたし、エミリアも救った。いろいろな人との絆も深まった。良いことばかりだ。あまりにいい流れなので、見ていてつまらないし、ストーリーとしてハラハラしないし張りがない、という不満はあるのだが、それとは別に、ギャグを連発しながら明るく陽気に困難に立ち向かうスバルがそれまでのスバルと全然違うのでびっくりしてしまった。でも、第11話のスバルの言葉を思い出すと、コレが彼の生き方なのだなぁ、と納得した。以下、第11話より:

  • スバル:俺の故郷じゃ、来年の話をすると鬼が笑うっていうんだよ。だからさ、笑えよ、レム。湿気た顔してないで、笑え。笑いながら、未来の話をしよう。お前がこれまで後ろ向いていたもったいない分を、今後は前を向いてお話しようぜ。とりあえずは明日のことからでも。
  • レム:明日のこと?
  • スバル:そう、明日のこと。なんでも良いぜ。例えば…明日の朝食はメニューを洋食にするか、和食にするか。靴下は右足から履くか、左足から履くか、なんてくだらないことでも良い。どんなつまらない話でも、明日があるからできる、明日の話だよ。どうだ?
  • レム:レムはとっても弱いです。ですからきっと、寄りかかってしまいますよ。
  • スバル:いいんじゃん?俺も弱くて、頭悪くて目つき悪くて、空気読めねえ。けど、そこらへんは、周りにフォローを期待しながら他力本願で生きているからさぁ。お互いに寄りかかって進めばいいよ。笑いながら肩組んで、明日っていう未来の話をしよう。俺、鬼と笑いながら明日の話をするのが夢だったんだよぉ〜!
  • レム:鬼がかってますね!
  • スバル:だろぉ!?

 これを最初に観ていたときは、「突然偉そうに語りだすなぁ〜」と思ってしまったが、最後の5話の、気を張り過ぎずに前向きに頑張るスバルを見ると、なるほどなぁ、と思った次第である。

「幸せは口にしてはいけない」という価値観について

 もう一つ感じたことは、「幸せ=口にしてはいけない」という価値観もあるかもしれない。例えば会社で「最近どうよ?」と聞かれたら、最もよくある返答が「いや〜最近色々忙しいっすね…」というネガティブなものだろう。本当にそうかもしれないが、「いや、もう最近絶好調っすよ!」のようなポジティブな返答は許されない雰囲気がある。「何だコイツ?そのうち痛い目に合うぞ!」と思われてしまいそうだ。最終話(第25話)でもエミリアがそういう価値観と戦うシーンがある。それを観てみよう。

  • エミリア「いいのかな…。私が…、私なんかが…、こんな嬉しいことばっかりしてもらって…、こんなに幸せな気持ちで…、贅沢な思いなんかして…。」
  • スバル「いいじゃん!しようよ贅沢!幸せなんかいくらあっても困りゃしないし。溢れかえって余ったら配ったら良いしさ。ゆっくりでいいよ、エミリア。」

Toricagoの突破に必要なのは、他者の視点

 もっと前向きに、明るく。楽しくて仕方ないぐらい。ワクワクして。爽やかに。軽やかに。そんなスバルのような素晴らしい人生を目指していきたいと思った次第である。でもいったい、どうすればそういう人生が実現できるのだろうか?
 この物語では、なんらかの思い込み・しがらみなどの鳥かごに閉じ込められている人物が、それを打破して成長していくシーンが少なくとも3つある。一つは前述の、スバルがレムを励ますシーンである。そんなに自己評価低いと、人生楽しくないぞと。もっと笑っていこうぜ、と。二つ目は今回の記事で詳しく紹介していないが、レムがスバルを励ます第18話である。三つ目がスバルが差別に苦しむエミリアの心の鳥かごを外してあげるシーンであり、こちらも第25話から会話を一部紹介済みだ。
 特徴として、誰かが鳥かごを外してくれるということだ。しかも、その相手は鳥かごの中に入ったことのない人でなければならない。例えばスバルはどうやってレムが角を失ったのか知らない部外者である。そしてレムはスバルが死に戻りで苦しんでいることを知らない部外者である。そしてスバルはハーフエルフに対する根深い差別やその空気を今までほとんど吸っていなかった部外者である。ここらへんに鳥かごをぶち壊すヒントがありそうな気がする。ペテルギウスのように自分一人の殻に閉じこもっていると、やっぱり脱皮できない。信頼できる人に相談しながらなんとか自分の心の壁を打破していきたいが、その相手が、部外者である必要もあるのかもしれない。

終わりに

 言葉で解説してしまうと、当たり前のことばかりであるかもしれない。しかしこういう当たり前のメッセージは、物語であるからこそ、心に響くものがある。ビジネス書の形式ではとても伝わらないものばかりだ。ということで、『Re:ゼロから始める異世界生活』のお陰で人生をもっと良い方向へと変えていく力をもらった。今後も、もっともっとToricagoを打破する仕事術を開発していけるよう、頑張っていきたい。

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