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Toricago Lifehack Research

10年後、『鬼速PDCA』はコモディティ化するか?

PDCA

 去年の10月末に『鬼速PDCA』(著:冨田和成さん)を読んでから、PDCAを回してきて4ヶ月。ブログでも、数多くの『鬼速PDCA』関連記事を公開してきた。でも、そもそもなぜ私は、こんなにPDCAスキルアップを目指しているのか。なぜPDCAを習得しなければならいのか?

 それは当然、自分のスキルを高めようと色めくビジネスパーソンが周囲に、そして世界に五万とひしめき合う中で、なんとか自分の生産性を向上させ、なんとか一歩先んじて、なんとか他の人と差をつけて、この厳しいビジネスワールドでなんとか付加価値を発揮していくためである。

 だが、もし、他の五万といるビジネスパーソンが、全員同じことを考えていたらどうなるのか?「生産性の高さ」というのが差別化要因にならなくなり、PDCAコモディティ化するリスクはないのだろうか?

 水面下で全員が同じ努力をしていた、ということは多々ある。「身についた頃には差別化要因にならなかった!」ということも。

 これは、鬼速PDCAフェスティバルに今日まで2週間以上付き合ってくださった祭り参加者の皆さんの、大きな関心ごとであるに違いない。そこで、今日はこの話を徹底的に深掘りしていきたい。

コモディティ化した、3つのビジネススキル

 本題に入る前に、そもそもなぜ『鬼速PDCA』を身につけるべきなのか、というところを復習してみよう。引用すると、

 世のなかのキャッチアップの速度は、日進月歩で早まっている。それに伴い、かつてのビジネススキルはどんどんコモディティ化(日用化)している。そんな状況だからこそ、ますます価値が上昇するビジネススキルがPDCA力であると思っている。

 ということになる。つまり、一生懸命スキルを身に着けても、しばらくすると、それがありふれた「コモディティ」のようなスキルになってしまうということだ。その具体例として、3つの話が紹介されている。それが、営業、英語、そしてMBAだ。

営業スキル

 1つ目の例は、著者の方が起業する前に取り組んでいた証券営業。少し前まで、営業マンにとって「情報」が命で、いかに金融や経済や商品の知識を頭に叩き込むかが重要であった。「入社当時は主要な数字を頭に叩き込んでからお客様のもとに向かっていた」とのこと。

 だが、今では、営業マンがiPadを片手に、その場で情報を検索するのが一般的に。逆に、「お客様から強く求められるようになったのは、資産運用に関するリアルタイムでの次の投資方針、より深いレベルでの助言である」。

英語スキル

 2つ目の例は、英語力。「英語」については多くのビジネスパーソンにとって関心の高いスキルに違いない。

 だが、「ひと昔前までは英語が話せるだけで引く手あまただったのに、いまでは人材市場での差別化はできないし、自動翻訳の精度を年々上昇しているので、もしかしたら近い将来、通訳という職業はこの世からなくなるかもしれない」とのこと。なんてこった。苦労して手に入れたスキルの価値が低下するだと?恐ろしい話だな。

MBAの資格

 3つ目の例は、MBA「本屋に行けば『MBAで教える〇〇』といった類の本がいくらでも手に入るし、オンラインで授業動画を見ることすらできる。世界と比較すれば日本でのMBAホルダーはまだまだ少ないが、それでも年功序列制度の崩壊と国内MBAの増加でMBAホルダーは決して珍しい存在ではなくなった」とのこと。しかも、最近は海外へのMBA志願者が減っているらしい。

なぜPDCAか?

 営業(情報)、英語、MBAというビジネスパーソンのかつて関心が非常に高かった3つのスキルの価値が低下している。確かに言われてみれば、差別化要因にはなりにくくなっているのかもしれない。

 では一体、私達ライフハッカーはどうすればよいのか。英語に加えて中国語を勉強しないといけないのか?それともMBA経営学修士)に加えてMS(理学修士)も取得すべきなのか?本から少し引用してみよう。

 いまの世のなか、正解がどんどん変わる。変わる前に手を打てる先見の明があれば理想だが、それがなくても変化を察知し順応する柔軟性があるだけでも十分、価値がある。それはまさにPDCA力である。
 PDCAは対象を選ばない。どのような業界、どのような職種であっても応用できる。これほど万能なビジネススキルは存在しないと言っていい。
 いや、正確に言えばPDCAは個別のビジネススキルとはまったく別の次元にある。
 PDCAは、個別のスキルの習得を加速させるためのベースだからである。PDCA力さえ上がればスキルの上達が圧倒的に速くなる。若いビジネスパーソンは1日でも早く成果を出そうと、英語やコミュニケーションスキルなど効果が見えやすい実用的なスキルの習得に躍起になるが、実はそうしたことに手を付ける前にPDCA力を身に着けたほうが、中長期的に見ればはるかに大きな効果をもたらすのだ。

 ということだ。そしてココまでの話は「個人」の次元だが、「組織」(企業)の次元で考えても、同じような環境にさらされている。つまり、

 どれだけ真新しいビジネスモデルやテクノロジーであっても差別化要因にはならない。瞬時に各国の言語に翻訳され、世界中に広まり、陳腐化してしまう。2000年以前の日本では、「企業の栄華は10年持てばいい」と言われていたが、現在では数年持てばいい方である。
 ビジネスモデルで企業価値が測られる時代は終わったと考えている。そうではなく新しい仕組みやサービスを鬼速で生み出し続けられる組織力と、市場の変化に瞬時に対応できる柔軟性を持った企業こそ、激動の時代を勝ち残れるのである。

とのことである。つまり、個人のレベルであれ、組織(企業)のレベルであれ、スキルのためのスキル「PDCA」を身につけることが欠かせない時代になってきているのだ。「スキル」に焦点が当たっていた時代から、「スキルのスキル」が重要になる時代へ。

スキルがコモディティ化する条件とは?

 長くなったが、今日の本題に入ろう。

 昨今、世の中では組織レベルでは労働改革ブーム、個人レベルでは生産性ブームを迎えており、多くの人の共通の重要課題となっている。『鬼速PDCA』にかぎらず、ハイパフォーマーを目指すためのビジネス書の出版が相次いでおり、実際にそういう本ほど売れる傾向にある。

 『鬼速PDCA』も10万部近くも売れてしまっているわけで、多くの人が生産性を上げ、PDCAをどんどん回したいと考えている世の中であれば、「10年後、生産性の高いハイパフォーマーコモディティ化するリスクはないのか?」という疑問を出て来る。それを深掘りしておく必要があるだろう。

 ただし、私は労働環境についても、人材・人事・キャリアについても、まったくの素人であるので、以下、単なる妄想だと思って読んでほしい。

 まず、PDCAに限らず、何かのスキルがコモディティ化する条件には、外部条件と内部条件がある。

内部条件:Technological Breakthrough

 最初に内部条件から説明しよう。付加価値の高いスキルというのは、身につけるまでに多大なエネルギー、資金、労力、時間等を投入しないといけないことが多い。会社を辞めてMBA留学を目指したり、何千時間を語学の勉強に捧げたり、何百以上の企業の証券コードを淡々と記憶していくといったことは、どんな人でも気軽にできるものではない。これがある種の参入障壁になっているからこそ、付加価値が高いし、コモディタイズとは遠いスキルになるのである。

 このハードルが技術によって突破されることがコモディタイズの一つ目の条件である。テクノロジーが進展することで、スキルのコモディタイズは起こる。

 例えば、タブレット・モバイル端末の登場により営業マンは情報を頭に叩き込む必要は消えた。データテクノロジーの発達により自動翻訳の質が圧倒的に向上した。オンライン上の大規模な教育プラットフォームを可能とする各種のITインフラの発達により、MBAに相当する授業は全世界のどこにいても、誰でも無料で受けられるようになった。

 だが、技術の進歩は、ふと偶然にして起こるものではない。Elon Muskの言葉を引用してみよう。

People sometimes think technology just automatically gets better every year but actually it doesn't. It only gets better if smart people work like crazy to make it better. That's how any technology actually gets better. By itself, technology, if people don't work at it, actually will decline. Look at the history of civilizations, many civilizations. Look at, say, ancient Egypt, where they were able to build these incredible pyramids and then they basically forgot how to build pyramids. And even hieroglyphics. They forgot how to read hieroglyphics. Or if you look at Rome and how they were able to build these incredible roadways and aqueducts and indoor plumbing, they forgot how to do all of those things. There are many such examples in history. So I think we should always bear in mind that entropy is not on your side.

 ココまでの話をまとめると、付加価値の高いスキル(=面倒でコストが高い)がコモディタイズするには技術的突破が必要であるが、技術はそうカンタンに進展するものではない。そこで次の外部条件が必要、という話になる。

外部条件:Demand Side

 外部条件は、簡単に言えば世の中が求めているかどうかである。需要があるほど、それをコモディタイズすることにより世の中は進展する。それに向けて、研究者や技術者がイノベーションを起こすモチベーションが社会的に生まれるのである。

 営業にしても、英語にしても、MBAにしても、それらを持つ人・操る人が過去から現在の日本で非常に価値があり、求められていた。そういう分野は、技術を進展させるモチベーションが高くなりやすくなり、コモディタイズは起きやすくなると考えるのが自然であろう。例えすぐに技術革新が起きなくとも、コモディタイズされずに長く放置されるような時代が長く続けば続くほど、既存の仕組みを崩壊・構築・進化させるインパクトが大きくなり、マスクの言う"smart people work like crazy"状態が発生しやすくなるとも言えるので、結果的に社会的Demandが重要ということになる。

PDCAは条件を満たすのか?

 それでは、PDCAは内部条件・外部条件を満たすのか。私は『鬼速PDCA』を出版直後から4ヶ月間ほど取り組んできたが、かなりのエネルギーを投入してきたし、少しでも気を抜くとPDCAサイクルが停止してしまうことも経験してきた。お金はかからないし、人生のリスクを取る必要はないという面で参入障壁は一見低く見えるが、エネルギー、労力、そして時間はそれなりに投入し続けないと決して身につかないと感じている。つまり、『鬼速PDCA』は高付加価値スキルの匂いがプンプンする。一朝一夕では身につかないからだ。

 それでは外部条件を見てみよう。繰り返しになるが、今の日本(そして世界)では、PDCAを回せる人材が非常に求められている。需要は高い。

 そうすると、次の技術的な内部条件を満たしているかどうかがポイントになる。多くのスキルはIT革命によってコモディタイズが恐れられているが、PDCAの場合はどうか。私が数ヶ月間、PDCAを実践してきた感想では、P、D、C、Aの各ステップはデジタル化できる。例えばPではXMind(マインドマップ)、DではTodoist(TODOツール)というように、『鬼速PDCA』では数多くのデジタルベースのツールをフル活用することが前提となっている。しかし、PDCAサイクルをデジタル化することはとてもできないのが現状だ。これは『鬼速PDCA』を実際に実践している人には同意してもらえると思う。しかも、そこがPDCAの最も「面倒」なところでもある。Planだけならなんとかなるし、Doだけならなんとかなるが、PDCAのサイクルとなると、別次元の難しさがある。その分、参入障壁(もしくは参入し続ける障壁)が高まり、途中での挫折者を多く生む原因にもなっているのではないだろうか。

プロセスがシームレスにデジタル化すればスキルはコモディタイズされる

 一つ一つのパーツがデジタル化するだけではなく、そのトータルなプロセスがシームレスにデジタル化することでスキルがコモディタイズすると言っても、カタカナばかりで意味不明かもしれない。そこで一つ例を紹介しよう。友達とある場所に遊びに行く例だ。

 昔であれば、前日までに路線図を調べたり、当日遊ぶ場所に、最寄り駅からどのように行くかを地図で調べることが欠かせなかった。そしてヤフーマップをPCで開いて、印刷しておかないといけない。昔は「ヤフーマップとプリンターのお陰で、世の中は便利になったなぁ…」なんて思っていたりしたものだ。そして昔はSuicaもなかったので、駅で目的地を探して、お金を入れたり、その小さい切符をなくさないようにも気を遣っていた。そして改札を出る時に切符がないと騒ぐことも多かった。ようやく目的の駅を降りてからも、そこから印刷したヤフーマップを頼りに目的地を探してたどり着くまでもが一苦労。なんと、ヤフーマップに乗っていた場所が数年前の情報で、今では移転していて場所が変わっていた、なんてことも。

 今思えばすごく大変。色々と気をつけなければならないことが多かった。少しでも気を抜くと、痛い目に合う。でもそのかわり、情報収集・整理・利用スキルの価値は高かった。こういうことをミスなく遂行できる人は、ITスキルが高い「しっかり者」として周りから高い評価を受けていた時代だったのだ。

 しかしその後、スマホの登場によりそのスキルはコモディタイズした。目的地をGoogle Mapに入れてしまえば、あとはスマホやそのGPSのお陰で、方向音痴な人でも事前準備を怠った人でも、ストレスフリーに目的地に到達できる。

 この例で私が言いたいことは、スマホが登場する前から、GPS機能、携帯電話機能、ヤフーマップ機能、乗り換え案内機能などは別々に存在し、各プロセスはデジタル化されていたという点である。だが、全体の流れがシームレスにつながっていないがために、その繋ぎ目において「面倒さ」が発生し、スキルとしての価値が高まっていたのである。

 『鬼速PDCA』の本が他のPDCA本と大きく異なるのは、その細かさだ。P・D・C・Aという上位のレベルでは4ステップに見えるが、本書を読んだ人の多くは、その細かいプロセスの多さに驚かされる。そのプロセスが無駄に細かいのであれば意味がないが、今まで実践してきた限りでは、その一つ一つに意味があり、PDCAサイクルが全体として鬼速で回るように設計されている、すごいスキルofスキルなのである。その分、繋ぎ目も多くなる。いくらITツールを使いこなしたとしても、その繋ぎ目を乗り越えることはできない。だからこそ私は、『鬼速PDCA』を簡単にコモディティ化し得ない、超絶高付加価値スキルと現時点では認識しているし、今回の鬼フェスを企画する原動力にもなっている。
 
 つまり、PDCAの現状をまとめると、外部条件は満たされる(需要は高い)が、内部条件は満たしていない(非常に面倒で、それを解決する技術が未発達)ということになる。

10年後、内部条件は満たされるのか?

 Pの結果をDで利用し、Dの結果をCで利用し、Cの結果をAで利用し、そのPDCAサイクルをシームレスにデジタル化する時代は来るのか?

 特段技術に詳しいわけではないので、以下も妄想にすぎないが、一つ怪しいのはIoT時代の幕開けである。米国で大流行中のAmazon AlexaのようなIoT端末は日本ではまだ扱われていないし、LINEによるClovaも今夏まで待たないといけないので、イメージが難しいところではあるが、そういったライフハッカーが所有する数多くのガジェット端末間が連動するようになれば、今はかなり面倒なP・D・C・Aのつなぎ目の部分もデジタル化されてしまうリスクがあるのではないかと考えている。10年後というタイムスパンを考えれば、十分にシームレスPDCAサイクルが出来上がっている可能性があり、非常に危機感を感じる。ライフハッカーは便利じゃないものを自分だけ便利にすることで、周りと差をつけたがる人種だ。なので、対象が本質的に便利になってしまうようなイノベーション(面倒レベルがゼロに収束する出来事)は戦いの余地がなくなるので怖いのである。

 もう一つ怪しい匂いがするのがゲノム編集である。将来的には、現在の美容整形くらいの感覚・頻度で、普通に、気軽にDNAを編集する時代が来ると言われている。例えば『ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃』(著:小林雅一さん)などを参照いただきたい。オリンピック選手並みの身体能力や、ノーベル賞級の知能を持つPerfect Humanを設計する日が、私達が生きている間に実現する可能性もある。そうなれば、PDCAのスキルを習得する参入障壁である「面倒さ」の部分を軽々と乗り越えられる人間がデフォルトになる。これはPDCAスキルが「自転車をこげるようになる」ぐらいのEasy Taskに成り下がってしまうことを意味している。こちらの技術動向も、PDCAを志す人間としては注視しておかなければならない。

 ただ、先に起こるのはやはりIoTによるPDCAサイクル全体のデジタル化であろう。ゲノム編集はもう少し長期目線でウォッチしておくべきかもしれない。

じゃあ、『鬼速PDCA』を身につけなくてもよいのか?

 当然、次の疑問として出てくるのがコモディティ化する可能性があるのに、『鬼速PDCA』を身につける必要があるのか?」ということだ。これに対する私の答えは「YES」である。

 時代の移り変わりは読むのが難しく、来るとわかっていても、いつ来るかは読めないことが多い。時期が読めたとしても、コモディティ化がゆっくり進む例も多い。例えば15年前の2002年にハイパー予言能力を持つ新入社員がいて「これから5年以内にiPhoneという画期的端末が世に出る。だからPCなんて古いし、私はブラインドタッチも習得したくないし、MSオフィスもやるだけ時間の無駄だ!時代はモバイルだ!」と言い出したらどうだろうか。予言が的中したとしても、オフィス環境はそんなに激変しない。同様にチャットが良いとわかっていてもメールはなくならないし、音声認識の方が速くなりつつあっても、タイピングが情報入力手法としては未だに王様である。

 10〜20年前に戻れるなら、英語もMBAも習得できるなら習得すべきであろう。むしろ、コモディタイズするとわかっているからこそ、「一刻も早く習得してしまって、コモディタイズまでにできるだけ多く果実を味わい、新時代に備える」というのが賢い生き方ではなかろうか。

 PDCAも同様に、少なくともこれからの5〜10年間は確実に差別化要因になるので、今すぐにでも全力で身につけるべきものであると考えている。そして周りのビジネスパーソンをとっととごぼう抜きしてから、次の時代のことを鬼速で考えるしかない。

 (私は現状、ごぼう抜きされている側の人間なので、私が言うのはおかしいのだが笑。でも、だからこそ真剣に『鬼速PDCA』に取り組んでいるわけである。)

PDCAコモディティ化した時代に、差別化要因となるスキルは何か?

 それでは、さらに先の時代の話として、「PDCAコモディティ化した時代に、いったいどういうスキルが差別化要因となるのか?」という話をしてみたい。繰り返しになるが、私は何かの専門家ではなく、凡人サラリーマンであるので、以下、妄想だと思って読み進めてもらいたい。

 ズバリ、それは「情熱」である。なぜなら、「PDCAは回せる、でもなぜPDCAを回すのか?」という問いが一層投げかけられるようになり、孫正義さんの言葉を借りれば、「腹の底から、登りたい山を決める」だったり、「高い志」ということことが問われるようになる。孫正義さんの場合は、「情報革命で人々を幸せにする」というビジョンに基づく情熱があるし、Elon Muskの場合であれば、"Make the world a better place"に基づく情熱がある。

 「おいおい、突然、なぜ意識高い系ぶっているのだ!寒いぞ!」と突っ込まれそうだ。だが「意識の高さ」は要するに「志」のことである。今までの日本(そして世界)では、この「高い意識」というものに焦点が当たることは、一部の起業家・経営者を除いて、あまりなかった。「どうすれば心の底から達成したい夢を描くことができ、それを信じて走り続けられるのか?」という問いは、2つの理由で深掘りされてこなかった。

(情熱も、志も、ビジョンも、意味がそれぞれ本来は異なるが、ココは議論の簡略化のために「志」で統一することにする。)

「志」に焦点が当たらなかった2つの理由

 一つ目の理由は、その一歩前のPDCAで精一杯だからだ。PDCAもろくに回せないのに、人生の壮大な意味などを考え出す余裕はない。これはPDCAや生産性が現在の日本で注目される前の時代を考えればわかりやすい。今までの日本は「DO」が圧倒的に重視されてきた。「死ぬほど働け」だったり、「身を粉にして働け」などだ。長時間労働をしてDODODO。それにより欧米にキャッチアップしたというのは、よく聞く話である。そんな時代にPDCAを意識して「これってそもそもやる意味ありますか?」と上司に聞いたら、「つべこべ言わずやれ!(怒)」と殴られてしまうかもしれない。

 だが、時は過ぎ、今は何でもデータで定量的に把握しやすくなり、Checkの価値が相対的に上昇し、DOの価値が相対的に下がるという、DOのコモディティ化が起きた(同時に、PDCAのサイクルそれ自体の価値が上昇した)長時間労働では差別化しにくい業種・業界が増えてきた、という意味に他ならない。そのためにPDCAに焦点が移っているとも言える。あるスキルがコモディタイズしたら、そのさらに上位なスキルに焦点が移るというのは、他の例でも同じだ。例えば本『鬼速PDCA』に出てくる営業の例では、知識を仕入れる→知識を活用した助言・コンサルというスキルシフトが発生していた。なのでココでもDO→PDCAというわけだ。

 つまりココで言いたいことは、現在(2017年)は、PDCAで精一杯なので、「志」の部分にまで手が回らない。余裕が無いので、「志」をアピールしすぎると、「つべこべ言わずPDCAを回せや!これだから意識高い系は(怒)」と上司に再び殴られてしまう。

(もちろん、PDCAを回すには、まずゴールがあるわけなので、「志」はゼロではない。DOの時代にもPDCAがゼロではなかったことと同じ。)

 もう一つの理由は、「圧倒的志の高さ」というのは、現在の世の中において付加価値がめちゃめちゃ高い。心からやりたいことがあり、自分の人生でそれをどうしても成し遂げたいと思っている人はすごいエネルギーを発揮し続けるし、その高いモチベーションによって、次々とビジネスワールドで成り上がっていく傾向にある。が、あまりに突出しているので、その人のアイデンティティや才能、もしくはその人が育った特殊環境として片付けられてしまう傾向がある。そういう人達に向かって「君の志はスキルだ」ととても言えないし、彼らも「私の志がスキルだと?何を馬鹿な!」と反応するだろう。これが「志」が深掘りされずに放置されてきた二つ目の理由だ。

「志」がコモディティ化する時代は来るのか?

 PDCAコモディティ化した時代には、PDCAを回す原動力となる「志」が差別化要因になるという話を展開してきた。それでは、更にその先の領域にまで思考を広げてみよう。つまり、「志」がコモディティ化する時代は来るのか?

「志」コモディティ化の外部要因

 これについて考えるためには、コモディティ化の2つの条件を思い出せば良い。まずは外部的条件(DEMAND)から見てみよう。これは前述のように、PDCAがコモディタイズされたことにより、「志」を追い求める人が増えると予想している。

 その兆しはすでに現れている。例えば、よくニュースで「ハングリー精神の欠如」が国家的大問題になっているという話を聞く。人によっては外向き思考、起業家精神、チャレンジ志向など言い方は色々あるかもしれないが、結局は強い「志」が欠落している、という話だろう。理由として衣食住に苦労することなく、戦争に巻き込まれる心配もない時代に育ったとか、黒船が攻めてくるような国家的危機感が足りないとか、色々な説を展開する人がいる。だが、彼らの発言を換言すれば「志のレベルは環境によって左右される」と半ば諦めているようなものである。

 現時点ではどっちみち、「志」まで手を回す余裕がないので、当分は「PDCA」や「生産性」に焦点が当たり続けるだろうが、PDCAがコモディタイズされた後には余裕が発生するし、差別化要因として浮上する。そこまで時代が進めば、「志」をスキルとして捉え直し、どうすれば「志」を強化できるか、ということを真剣に議論する時代が来る。ちょうど今の時代の、「どうすれば生産性を高められるか?」と同じように。つまり、外部要因は将来的に満たされるだろう。

「志」コモディティ化の内部要因

 次に、内部要因、技術の壁の話。需要があっても技術的に突破できなければコモディタイズできない。だが、ここは先の先の話になり、難しい。パッと思いつく例だと、例えば仮想現実のVR端末を用いて、戦争に派遣された兵士の心的外傷後ストレス障害(PTSD)を克服する治療の研究が進められているという話がある。こういうベクトルで、「志」を脳に教え込むようなことができるようになるかもしれない。これは別に不思議なことではなく、私たちは既に読書によって「志」を養っている。例えば孫正義さんが『龍馬伝』を読んだことをきっかけに「志」が覚醒したというのは有名な話である。

 その他にも、モチベーションに関わるあらゆる研究動向から見通すこともできるかもしれないが、先端的な動向をもし把握している人がいれば、是非このあたりの意見をもらえたら嬉しい。

 さらには、先の先の先の話として、「『志』がコモディティ化した時代に差別化要因になるスキルは何なのか?」という問いも思考のストレッチとしては面白く、実は考えていることがあるのだが、話が長くなるので止めておこう。

終わりに

 ということで、最後にまとめよう。長々と書いてしまったが、言いたかったことは、『鬼速PDCA』はすぐにコモディティ化することはないので、安心して取り組める。だが、10年後になると、状況がガラリと変わっている可能性はあるということは頭の片隅においておくべきかもしれない。むしろ、一刻も早く『鬼速PDCA』を身に着けて、周囲との差別化を少しでも長く味わいたいところである。そして、余裕が出てきたら、来たるべき新時代に向けてアンテナを立てておくべきだろう。

 「いや、そんな先の話して意味あるんかいな?」というツッコミもありそうだが、最近「こんなにITが来るとわかっていれば、10年前に戻ってプログラミングの勉強でもしておくべきだったな」ということを言う人が多い。それなら、10年後、20年後の自分が同じ失敗をしないように、その時の世の中を想像する努力をしなければならない。私の現時点での仮説は、10年後には「10年前に『鬼速PDCA』を身に着けていれば!」と言う人が増え、20年後には「なぜ『志』を環境依存と決めつけて、スキルであることに気づかなかったのか!」と言う人が増える、というものだ。

 「志」をスキルとして捉え、まるで受験勉強をするかのように、「志」をせっせと身につけようとする話は、まだあまり聞いたことがない。なので、いちライフハッカーとしては、今後10年間の個人的なテーマとしたいと思っている。PDCAがスキルのスキルであれば、志はスキルのスキルのスキルだ。だが、スキルのスキルのスキルを極めるためには、まずはスキルのスキルである『鬼速PDCA』を極めないことには話にならない。ということで、引き続き『鬼速PDCA』を極めて行く。

 楽しみだぜ!

<鬼フェスとは>
 2017年2月18日から3月6日まで、毎日『鬼速PDCA』の記事を連続で公開しています。Twitterハッシュタグ「#鬼フェス」にて質問も受け付けています。『鬼速PDCA』体験記も募集しています。『鬼速PDCA』を実践している方は是非。詳しくはこちら。
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